華家
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No.441
カクテルキッス04 2019.08.04
#千至 #シリーズ物 #ウェブ再録 #カクテルキッス
「えっ、千景さんが? それで、容態はっ……」「今、病院で治療中みたいなの。わたしと左京さんでひとまず…
カクテルキッス04
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「えっ、千景さんが? それで、容態はっ……」
「今、病院で治療中みたいなの。わたしと左京さんでひとまず行ってきます」
紬は青ざめて、口を押さえた。
命に別状はないようだが、どんな状態なのか。いづみたちだけで大丈夫だろうか、と思考をぐるぐると巡らせる。
組は違うが、大事な仲間なのだ、無事であってほしい。できれば、これからも芝居を続けていける状態ならば嬉しいが、と唾を飲んだ。
「警察の方から連絡があったんですか? ひどい事故だったのかな」
「いえ、至さんから……至さんを迎えに行った先でらしいので、詳しく聞いてないんです」
「えっ、至くんから!?」
紬は目を瞠った。瞬時に頭をよぎったのは、二人の関係だ。
いづみは彼らのことを知らないし、左京もどうだか分からない。至を支えられるのは、今この場に自分しかいないのだ。いてもたってもいられず、紬は口を開いた。
「監督、俺も行きます」
こんな時に限って万里がいない。足が震えているけれど、至はもっとつらい思いをしているはずだと、自分を奮い立たせる。
そうして玄関へと向かう途中、談話室が騒がしい。きっと千景のことでみんな動揺しているのだろう。
「左京さん、俺も」
「てめぇはここにいろ、何ができるわけでもねえだろ」
「それは、そうッスけど……」
十座が心配そうに眉を下げたのが見える。紬は、密と目が合った。そういえば、彼は千景と何かしらの?がりがあるのだったと思い出し、駆け寄った。
「密くん、ひとまず俺が様子見てくる。連絡入れるね」
「……アイツは、大丈夫だと思う。至のこと、頼みたい」
「えっ……、と、密くん、もしかして……知ってる?」
密がこくんと頷く。千景の心配より至の方を気にするということは、恐らく千景は大丈夫だろうという根拠のない自信が湧いてきた。
丞のようにとまではいかないが、かなり体を鍛えているようだし、彼の身体能力に期待をしたい。
だけど、至はそうもいかないだろう。恋人が目の前で事故に遭って、平気なわけがない。
「分かった……俺で力になれるか分からないけど。行ってくるね」
紬は拳を握りしめ、寮を出る。すぐ後から、左京も足早に出てきた。
「十座くん、なだめられたんですか?」
「アイツが行ってもしょうがねえだろ。こっちのヤツらうまくなだめとけって頼んできた。伏見もいるし、大丈夫だろうとは思うが。ああ、監督さんは後ろだ、運転すんな」
三人で車に乗り込み、紬は助手席でシートベルトを締めた。
そうして紬は、万里にLIMEメッセージを送る。千景が事故に遭ったこと、至が一緒だったということ、今自分が病院に向かっていることを。
こういったツールは未だに慣れないが、ちゃんと伝わるように言葉を選んで送ったつもりだ。
至を支えないといけないと思いつつも、やはり心細い。万里も大学の付き合いがあるだろうが、余裕があれば来てくれないだろうかと考えてしまった。
(また万里くんに甘えてる。俺の方が年上なんだから、しっかりしないといけないのに。こんなんじゃ、至くんを支えられない)
紬の心細さより、至の不安の方が絶対に大きい。紬は端末をぎゅっと握り締めて、重苦しい車内の雰囲気の中、至を思った。
#千至 #シリーズ物 #ウェブ再録 #カクテルキッス