No.713

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ただ、君と居たいと

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.04.01

#お題 #片想い

 どこでどうなって、友人関係になれたのか分からない。 隣を歩く男の横顔を盗み見ながら、跡部は何度目か…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

ただ、君と居たいと

 どこでどうなって、友人関係になれたのか分からない。
 隣を歩く男の横顔を盗み見ながら、跡部は何度目かの疑問を心の中で生み出した。
 手塚国光とは、学校が違う。とはいえ同じ都内で、行き来が困難なわけでもなかった。テニスをしないかと誘われて、断る理由なんかなかった。
 惚れた男に誘われて、断るバカがどこに居る。
 跡部景吾は、手塚国光が好きだった。もちろん恋という意味でだ。
 最初はただ、プレイヤーとして惹かれているのだと思っていた。無二のライバルだと、同じ時代に生まれたことを嬉しくも思っていた。
 だけど、この感情がライバルとしてのものではないと気づいて、困った。
 どう頑張っても叶いそうにない初恋だ。
 試合前から負けが決まっているようなもので、ラケットを握ることもできない。
「跡部、どうした? 今日はいつもより静かだな」
「ああ悪い、少し考えごとをしていた。つーか、いつもそんなにうるさいか?」
「いや、そういう意味ではない。お前が静かだと、落ち着かないと思っただけだ。気分が優れないようなら、今日はこのまま帰った方がいいのではないか」
 気遣ってもらえた、そんな些細なことにさえ胸が躍る。だけどこの想いは秘めておかねばならない。知られたら、きっと隣なんて歩けなくなる。
「平気だぜ。お前とテニスできるんだから、俺のテンションは最高潮に達してる。このまま帰したりするかよ」
 せっかく誘ってもらえたのだから、このチャンスは逃したくない。友人としてのポジションで、ラケットを握る。
「そ、……う、か。ならいいのだが。俺もお前とテニスができるのは嬉しい」
 膝から崩れ落ちていきそうだった。
 身近で、同じほどの実力を持った相手で、気楽に話ができる――というだけなのだろうが、テニスができて嬉しいと思ってくれているのならば、こんなに幸福なことはない。
 恋は叶わなくていい。生涯、友人として、好敵手として、一緒に前を見据えていられれば。
 この世界にただ、お前と居たい。
 それはとても贅沢なことに思えて、案外に強欲な自分に苦笑する。
「跡部、お前とはずっとこうしてテニスができればいい。そう思っている。迷惑でなければいいが」
 目を瞠った。心を読まれたのかと思うくらい、タイミング良く手塚が口にしてくる。手塚も、同じ世界に自分を望んでくれていると分かっただけで、報われた思いだった。
「迷惑なわけねえだろ。俺は――お前のテニスが好きなんだぜ」
 恋は口にできないけれど、せめて知っていてほしい。テニスにかけるその情熱に惹かれていることくらいは。
「そうか。俺も跡部のテニスは好きだ。さあ、お前のサービスからで構わないぞ」
「――ああ、覚悟しやがれ、手塚ァ!」
「油断せずに行こう」
 高く、高くトスを上げる。歓喜に震える指先では、そのラインは狂ってしまいそうだったけれど。


お題:リライト様 /ただ、君と居たいと
#お題 #片想い