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No.21
大好きもうまく言えなくて
サークル活動
創作物について
二次創作BL小説を発行、頒布しています。ご理解の上閲覧願います。
また、年齢制限のある作品はその年齢に達してからお買い求めください。
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サークル名:華家
ペンネーム:華印
カップリングについて
テニプリ→手塚×跡部 大人げない部長×スパダリ(受)な感じ。想いの大きさはお互い同じ
他にリョ桜、忍岳が組み込まれてたりします。
Twitter(現X):@kain00419
Pixiv:Pixiv

【装丁】文庫サイズ/142P/全年齢/800円
【書店通販】フロマージュブックス様 予定
【自家通販】通販について
【あらすじ】些細な事故で、手塚は「跡部のことだけ」記憶を失ってしまう。思い出したいと思い交流を続けるけれど……。
部室のベンチに腰をかければ、目眩も少しはマシになる。俺は支えてくれた大石に礼を告げて、改めて跡部という男を見た。
……なるほど、強烈な印象、だ。
それでも、俺の中では初めて見る男。
「おい手塚、大丈夫なのかてめェ。どこか体の具合が悪いなら、うちの系列の病院紹介するぜ?」
声を聞いても、聞き覚えがない。
俺は眉を寄せて、唇を引き結んだ。跡部の姿を見ても、どうやら記憶が蘇ったりはしなかったようだ。
「手塚、どう……? 何か思い出した?」
心配そうな河村の声に、俺は少し躊躇ってから、ふるふると首を横に振った。跡部以外全員の口から残念そうなため息が漏れた。
「おい、なんなんだてめェらまで。思い出したかって、なんだ」
「えーと、何から話したらいいのか……。手塚、今記憶を一部失ってるみたいで
「……つまんねえ冗談だぜ、大石」
不機嫌そうな顔をして大石を振り向く跡部。
大石が何か言おうとする前に、俺はゆっくりと立ち上がってそれを制止した。
これは俺自身の口から話さなければいけないだろう。
「大石の言っていることは本当だ。すまないが、俺はお前のことが分からない」
跡部が一度瞬いて、青の瞳を大きく見開く。
こうしてまっすぐ正面から見てみると、少しだけ俺の方が背が高い。随分と整った顔をしているな……。女子たちが騒ぐのも分かる気はするが……。
「本気で言ってんのかてめェ」
「ああ」
跡部は、真偽を問うかのように皆に視線を巡らせる。気まずそうに頷くのを見て、僅かに目を伏せた。
「……そうか。つまり、実際に顔合わせりゃ思い出すかもしれねえって楽観的に考えてた結果が今ってことか?」
頭の回転が速いな。さすがに氷帝の部長を務めるだけある。あ、今は元部長か。
大石が、頬をかきながら「その通りだよ」と答える。顔を見て思い出せれば良かったんだが、現実はそう甘くなかったな。
跡部の瞳が、じっと俺を見つめてくる。心の奥まで見透かされそうなその瞳に、胸がざわついた。
「何があったか話せ。俺様には聞く権利がある」
俺、様……今、俺様と言ったのか? 自分に敬称をつけるとは、ものすごい神経をしているな。そういうのも含めて強烈な印象ということなんだろうか。
昨日俺に何があったのか、俺は簡潔に説明した。検査の結果は問題なかったこと、記憶の一部がないことは今日判明したことなどを。
「生活に支障はねえのか。青学の連中のことは、全部覚えてんだな?」
「ああ、生活には支障ない。皆のことはもちろん覚えているし、テニスするのになんら問題はない」
「そうか」
跡部があからさまに安堵した表情を見せる。
背筋がぞわりと震えた。自分のことを忘れられているというのに、なぜ安堵などできるのか。
「他に忘れてるヤツいんのか。そいつらにも逢わせた方が」
状況は把握したと言わんばかりに、跡部は俺から視線を背けて大石を振り向く。どうしてか、俺の心臓が痛んだ。
「跡部……その、言いづらいんだけど、どうも手塚が忘れてるの、跡部のことだけっぽいんだよね……」
「は?」
大石がなんとも言いにくそうに呟いて、跡部は思わず声を上げたようだった。
「……俺、だけ……?」
小さく呟いた後、再び俺を振り向く。
その顔がひどく傷ついたような色をしていて、冷水を浴びせられたような錯覚に陥る。
だが、跡部にしてみれば当然だろう。
記憶の一部……他にも忘れている物があるならまだしも、跡部のことだけが思い出せないなんて言われて、傷つかない方がどうかしている。
「跡部、すまない。どれだけなじられても仕方がないと思うが、俺もどうしてなのか分からないんだ」
「…………いや、……いい。それが、お前の……答えなんだろうなって、今、自分自身を納得させてるところだ。少し待て」
跡部は片手で顔を覆って俯き、もう片方の手のひらを向けてくる。
納得させているところ、というのが……すごいな。起きている現象を全て受け止めて、飲み込もうとしている。理不尽な状況だろうに、それでも。
……跡部は今、それが俺の答えなんだと言わなかったか?
答えとは……なんだろう。何か、大切なことだったように思うのに。やはりそれも思い出せない。
ふうー……と跡部の吐息が聞こえる。跡部が落ち着くまで、数分、あっただろうか。
「俺が今日ここに呼ばれた理由は分かった。役に立てなくて悪いな。だがそれだけなら帰るぜ。俺様もそう暇じゃねえんでな」
跡部はそう言って顔を上げ、部室のドアへと体を翻す。
突き放されたような感覚だった。
なんて身勝手なことだろうと思ったが、これ以上ここにいても意味はないだろうとばかりに踵を返す跡部を、このまま行かせたくなかった。
「待ってくれ跡部、お前のことを知りたい」
思わず腕を掴んで引き留めてしまう。跡部は驚いた顔をして振り向いた。
先ほどの傷ついた表情よりはずっといいが、少し心臓が跳ねたので……違う表情の方がいいな。
「お前のことを思い出せないままにしておきたくない。俺たちがどんな関係性だったのかも含めて、教えてくれないか」
「な、……んっ……」
跡部の顔が、真っ赤になる。
ちょっと待て、なんでだ。さっきよりも胸が騒がしい。やめてほしいんだが。
「お、俺は忙しいって今言ったはずだが?」
「では時間を作ってくれ」
「てっ……め、そういう、とこ……! 変わってねえじゃねーか!」
「誰も変わったとは言っていないだろう。お前のことを思い出せないだけだ」
俺は跡部の腕を掴んだまま、頼む。
頼むというには少し強引かもしれないが、こうでもしないと跡部は行ってしまう。学校が違うせいで、頻繁に逢えるわけでもないんだからな。
「お前が言った、俺の答えというのも分からない。お前に何か答えなければいけないことがあったのだろうか。教えてくれ」
腕を引き寄せて距離を詰めたら、跡部の顔がもっと赤くなった。……やめてほしいとも思うが、もっと見たい気持ちにもなる。
なんだ、これは。
「わか、分かったから、放せ! 近ぇ!」
言質を取ったところで、俺は跡部の腕を放した。証人が五人もいるからな、逃がしはしない。
「これは……えーと」
「話がまとまったってことでいいのかな。良かったね。俺たちもできることがあれば協力するよ」
「ふふっ、タカさんは優しいね」
「跡べー、なんでそんな赤くなってんの?」
「なるほど。手塚が昨日考え込んでいたことというのは、跡部への答えとやらだった可能性が高いな」
各々好き勝手に呟いた言葉に、跡部が反応した。
「考え込んでた? 手塚が……?」
「ああ、それでボールを避けられなかったらしい。手塚にしては珍しいなとみんな思っていてね」
「そ、……そうなのか」
跡部は少し気まずそうに俯き、スマートフォンでどこかに連絡を入れているようだ。この後の予定を調整しているのだろうか。忙しいというのは本当だったようだな。申し訳ないとは思うが、俺だって切実だ。
跡部のことを思い出したい。
皆が言うように、跡部という男は脳に強烈な印象を与える。この男を忘れるというのは相当な困難ではないかと思う。
それなのに、俺は忘れてしまった。どうしてなのか確かめないといけない。
答え、というのが気になるな……。
ああ、そういえば、何か大切なことを忘れているような気がしていたんだ。きっと跡部のことと、何かの答えのことだったんだな。
「手塚」
「なんだ」
「なんだじゃねえ。お前が教えろっつったんだろうが。移動してもいいか? 部活、もう次世代に引き継いだんだから、おいそれと使っていい場所じゃねえだろ、部室(ここ)」
しかも俺は他校の元部長だぜとスマートフォンをポケットにしまいながら呟く。なるほどと俺は頷いて、カバンを担ぎ直した。
畳む
#塚跡 #片想い #永遠の交響曲 #記憶喪失